恐ろしい人口減少の一断面 出生数の急減 ―人口動態統計月報年計(令和5年(2023))を見る―

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今、厚生労働省から公表された人口動態統計月報年計の結果が話題となっています。一言で言うと、出生数が急激に減少している実態が浮き彫りになっているからです。数字だけを見ていると「へえ」で終わってしまうかもしれませんが、過去3年程度を時系列で比較することで、その恐るべき変化(減少)の様子がより明確に見えてきます。

今、企業においても人口減少時代を見据えた改革が急ピッチで進んでいます。しかし、多くの人は人口減少時代と言われても実感が湧かないかもしれません。この統計データを通じて日本の大企業の経営層がいかに人口減少時代を乗り越えるために戦略を練り、実行しているのか、その焦りの背景を垣間見ることができます。

まずは、人口動態統計月報年計の結果を紹介しましょう。

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出生数を過去4年間比較してみる


厚生労働省のWebサイトで公表されている「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」を紹介します。

**参考リンク**
[令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況]

このデータによると、過去5年間の出生数は以下の通りです。

**出生数**
令和2年(2020) 840,835人
令和3年(2021) 811,622人
令和4年(2022) 770,759人
令和5年(2023) 727,277人


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どうでしょうか。この4年間で出生数は113,558人も減少しました。単純平均でも28,390人の減少――これは地方都市一つ分の人口に匹敵します。つまり、日本では毎年一つの市が消える規模の減少が起きているのです。

さらに、前年度比減少率を計算してみると、以下のようになっています。

- 令和3年(2021): 3.5%
- 令和4年(2022): 5.0%
- 令和5年(2023): 5.6%


減少率が年々増加していることから、今後も減少速度が加速する可能性が高いと考えられます。

荒い予測ですが、この3年間の減少率(平均4.7%)を基に2030年の出生数を試算すると、わずか52万人弱まで落ち込む可能性があります。つまり、2023年と比較して20万人以上減少する計算です。

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この劇的な出生数減少の影響を考える


劇的な出生数減少がもたらす影響を考えてみましょう。2030年、出生数が20万人減少した場合、以下のような変化が想定されます。

- 子どもの数が減少し、幼稚園・保育園の維持が困難になる
- 地域の小学校が統廃合される
- 子ども向け商品の市場が縮小する
- 幼児教育サービス企業の業績が低迷する
- 地域に子どもが少なくなり、活気が失われる


さらに、10代後半や20代前半となる未来の若者人口の減少によって、高校や大学などの教育機関の運営も大きな影響を受けるでしょう。現在でも大学運営は資金不足で厳しい状況ですが、さらに多くの大学が淘汰され、教育の質の低下も懸念されます。

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出生数の減少が示す未来


今回、出生数の観点から2030年以降の未来を想像してみました。人口という基本的な社会の土台が大きく変わることで、私たちの生活も想像以上に変化する可能性があります。

未来を見据えた企業の施策に対して、私たち個人も時代の変化を理解し、適応していく必要があります。ただ反対するだけではなく、現状を正しく認識し、柔軟に行動を変えることが将来の違いを生む鍵になるでしょう。



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