地域の勝ち組だったイオンが凋落? フードコートの衰退が示す未来

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かつて地域の憩いの場として圧倒的な存在感を誇っていたイオンモール。しかし、今、一部の地域でそのフードコートが閑散としているという報告が相次いでいる。これは単なる一過性の現象なのか、それとも社会全体の変化を映し出すサインなのか。

実のところ、地域でのフードコートがなくなると、大きな影響を受けるのは10代の男女なのだと感じている。彼らが時間を過ごす場所がまた一つ減っていくのであろうと危惧されるのである。地域で、それほどお金をかけず、一定時間他者と時間を共有できる場所がないというのは、結構厳しい環境になるの思われるからだ。

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←外出せずとも自宅でカフェ気分を味わえる必須アイテム。

1. フードコートがもぬけの殻になった理由


フードコートの飲食店が撤退する最大の理由は、採算が合わなくなったことにある。イオンモールへの出店には少なからぬコストがかかるが、来店者数の減少とともに飲食にお金を使う人も減少。結果、経営が厳しくなり、店舗撤退が相次ぐのだ。

特に人口減少が顕著な地域では、この傾向が加速する。5年後、さらなる人口減少が予測されるなか、長期契約を結ぶ飲食店はますます減っていくだろう。フードコートは、地域社会の変化を最も早く反映する場所なのかもしれない。

ちなみに、一般社団法人 日本ショッピングセンター協会から、SC(ショッピングセンター)動向や各種基礎データの推移に係るデータが公表されている。直接的に、SCの数が減っていることを示すデータは出していない(出しにくいだろうしね…)ものの、新規にオープンしたSCの数が年々減っている様子がデータで見ることができる。

こうしたデータを見ても、地域のSC、さらにはフードコートのおかれた状況が厳しいことは見て取れるかもしれない。

オープンSC数の推移
年(西暦) オープンSC数
2008 88
2009 57
2010 54
2011 54
2012 35
2013 65
2014 55
2015 60
2016 54
2017 48
2018 37
2019 46
2020 41
2021 24
2022 36
2023 34
https://www.jcsc.or.jp/sc_data/data/overview

2. 地域の人たちはどこで過ごすのか?


都市部ではカフェやレストラン、ゲームセンターなどの選択肢があるが、地方ではそうはいかない。郊外型ショッピングモールが唯一の娯楽施設だった地域にとって、その衰退は大きな痛手だ。

代替案として公共施設の利用も考えられるが、税収が減少するなか、維持管理の負担が増すのは避けられない。結果、多くの人が自宅にこもり、外出の機会がますます減っていく可能性が高い。

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3. バーチャル空間が新たな「居場所」になる?


山田昌弘氏の著書『希望格差社会、それから』では、「リアル社会で希望を見出せなくなった人々が、バーチャル世界で格差を埋める」と予測されている。現実世界での選択肢が減ることで、人々はより一層オンラインの世界に没入するのではないか。

『希望格差社会、それから』(山田昌弘著) 
←フードコートの衰退を通して見える社会変化をより深く理解するための一冊。

ショッピングモールがかつて果たしていた「憩いの場」としての役割を、これからはメタバースやオンラインコミュニティが担う時代が来るのかもしれない。

フードコートの衰退は、単なる商業施設の問題ではなく、地域社会そのものの変化の象徴である。今後、郊外のショッピングモールはさらに縮小し、地域住民のリアルな交流の場が失われていく可能性が高い。

この流れは不可避なのか、それとも新たな形で地域コミュニティが再生するのか──。私たちは今、その岐路に立たされている。




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