【日本の統計2019書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2019)

 総務省統計局が毎年公表している「日本の統計」。このブログでは、「日本の統計2016」及び「日本の統計2017」を使って、書籍の出版点数と平均定価の観点から、出版の戦略について考察しました。 【日本の統計2016/書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2016) http://cafework.seesaa.net/article/434847074.html?1560296187 日本の統計2017/書籍:書籍の出版点数と平均定価から見る出版戦略分析をフォロー(2016年に続き)。(総務省統計局 日本の統計2017) http://cafework.seesaa.net/article/449030079.html?1560296168  それから「日本の統計2018」が公表されたときには一度お休みして、「日本の統計2019」については再度、書籍の出版点数と平均定価の観点から、データをグラフ化してみました。  定期的にデータを見てみるのは、自分の認識の再確認もできるし、あらためて世の中の動向を知ることができて楽しいですね。  さて、今回も、新刊書籍出版点数(点)と 新刊書籍平均定価(円)を整理してみます。対象は平成24年から平成29年としてみました。 新刊書籍出版点数(点)と新刊書籍平均定価(円)の時系列変化  平成24年から平成29年までの年間の新刊書籍出版点数(点)について、総数をグラフ化してみました。 …

続きを読む

総務省統計局:読書週間が始まった!図書館数と貸出業務、そして書籍への支出金額の変遷

日本の統計2017/書籍:書籍の出版点数と平均定価から見る出版戦略分析をフォロー(2016年に続き)。(総務省統計局 日本の統計2017) http://cafework.seesaa.net/article/449030079.html?1509159179 男性週刊誌の統計を見る!週刊プレイボーイは善戦!? http://cafework.seesaa.net/article/442527107.html?1509159221 【日本の統計2016/書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2016) http://cafework.seesaa.net/article/434847074.html?1509159265 ================  読書週間というものがあることをご存じだろうか?私自身は知らなかった。今日は何の日?という観点から偶然、10月27日が読書週間の初めの日であることを知った。  「読書週間」は、昭和22年(1947年)に「読書の力によって、平和な文化国家を作ろう」という目的により開始されたものだそうです。  総務省統計局の「なるほど統計学園」というWebサイトでは、読書の日の初めにちなんで、いくつか統計データを示しています。 <目次> 1.読書と言えば図書館?図書館の数の推移 2.一人当たりの図書館の年間利用回数 3.1世帯当たり年間の支出金額 書籍(二人以上の世帯)は右肩下がり …

続きを読む

日本食の”うま味”について知りたい時に読みたい本。「だしの神秘」伏木亨(朝日新書)

 日本人ならば、味噌汁をはじめとした汁物を頂いたときに、「おいしいなぁ」と深く実感する人も多い。しかし、実のところ、そのうま味についてよくよく知っている人はあまりいないのではないか。  料理人や料理評論家ならいざ知らず、普通の日本人は、意外にも「うま味」そして、その材料となる「だし」について、あまり知らないのではないか。言葉としては、「うま味」「だし」等々というけれど、それ以上の知識は持ち合わせていないのが実態ではないか。  そう思い手に取ったのが本書、「だしの神秘」伏木亨(朝日新書)という新書です。読んでみて、日本の「だし」の背景にある様々な事柄を知ることができました。また、日本の「だし」の他に、世界の他国にはそれぞれの「だし」があることも知りました。  今回は、日本の「だし」、世界の「だし」についてご紹介。 <目次> 1.日本の「だし」は、昆布と鰹節 2.フランス料理の「だし」ブイヨンとフォン 3.等級をつける中国の「だし」 4.韓国の「だし」はクック 5.本書は他にも… 1.日本の「だし」は、昆布と鰹節  まずは日本の「だし」から紹介しましょう。現代の日本の「だし」は、干し昆布と鰹節のあわせだしが主です。それらの双方を得て、非常に特徴的な形で完成したものとなります。うま味の相乗効果を巧妙に活用した形で完成されたものと言われています。  日本では古くから昆布と鰹節が単独で主要な「だし」の材料として使われてました。し…

続きを読む

一度手放した本は戻ってこない?数学の書籍に関するあるある話

 昔買い込んだ書籍を売り払ってしまう。引越しや大掃除などの機会に、どうしても場所を取ってしまう書籍を処分した経験のある方は多いことでしょう。  その時は不要だと思っていた書籍。古い本だし、もう使わないし。だから捨てるか、売るか、してしまいましょうと…  多くの書籍の場合、購入してから10年もたてば、ほとんどあらためて読み返すことはないくらい、陳腐化してしまうことでしょう。そして、新しい書籍なども出版されているため、新しく出版された本を購入すれば事足りる。  しかしながら、数学に関する書籍では例外もあります。数学の本は、10年経とうが記述されている内容は陳腐化せず、常に使える理論が記載されているのです。  そして、購入する人がそもそも少ない書籍の分野であることもあり、出版数は少ない、直ぐに絶版になる…一度手放してしまうと、数年後に大きな問題に出くわすのです…  今回はそんな話の実例を紹介します。 <目的> 1.引越しを機に数学関連の本を手放す 2.「スペクトル法による数値計算入門」は重要書籍であった… 3.ところで実は1つのサイトでは中古品がありますが… 1.引越しを機に数学関連の本を手放す  書籍はかなりのスペースを取ります。普段は、それでも家の中の至る所に工夫して保管しておけば、何とかなるものですが、引越しや大掃除などの場合には、かなり問題になります。  特に引越しの場合、量が多くスペースをとり、更にかなり重い書籍を引越し先…

続きを読む

日本の統計2017/書籍:書籍の出版点数と平均定価から見る出版戦略分析をフォロー(2016年に続き)。(総務省統計…

 書籍のランキング 、人気の本などと、本に関する情報が世の中にあふれています。ただ、本や書籍のランキングといった紹介では、その時々の流行の本を知ることはできますが、 出版の分野別の動向や業界の様子を知るにはあまり役立たない。  そこで一年前、下記のタイトルで総務省統計局の「日本の統計2016」を使って、日本の出版に関する戦略の分析をしました。 【日本の統計2016/書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2016)  今年も総務省より「日本の統計2017」が公表されていますので、フォローがてら、「書籍の出版点数と平均定価」というデータを使い同様の分析をしてみました。  あらためて、「書籍の出版点数と平均定価」というデータについておさらいすると、日本の1年間の出版点数と平均定価のデータが、経年で見ることができるデータとなります。  昨今、世の中のみんなは、本を読まなくなったと言われており、それにあわせて出版業界も様々な対応をしているものと想定されます。実際、昨年のデータを使ってみた際にもその違いが明らかになりました。  本年の統計データを見てその傾向の変化について、あらためてフォローしてみましょう。何か変化が起きたのかしら? <目次> 1.出版点数は増えている?をもう一度。 2.書籍の分野では、社会科学、芸術、文学がビック 3.出版点数と平均価格の変化に見る、出版の戦略の分析フォロー(平成26年…

続きを読む

京都の女性の「かんにん」の効果とは。井上章一著「京都ぎらい」(朝日新書)

 以前、「京都ぎらい」(朝日新書)なる新書を読み、なかなか面白いものをかくなと感心した井上章一氏。  同氏の新しい新書「京女の嘘」(PHP研究所)なる新刊が出ていたので読んでみた。同氏は、美人の研究をしている人でもあるらしい…  アカデミックの立場から、美人という人それぞれ捉え方の異なる対象を研究できるのか?との疑問を抱えつつも、同書を読んでみた所感を下記にまとめてみたい。 <目次> 1.秋田美人、新潟美人、京都美人は、同地域の魅力が低下したことの証? 2.女性の魅力を引き上げる京都弁 3.まとめ 1.秋田美人、新潟美人、京都美人は、同地域の魅力が低下したことの証?  同書の中で、いわゆる○○美人という言い方についての話がある(○○の部分には、地域名が入る)。例えば、秋田、新潟、京都など。  同氏は、本当に○○で表記される地域に美人が多いのか?と疑問を持ちつつ、本来的には、地域から人がどんどんと集まる東京に美人が多いはずといっています。  それは、あらためて考えてみれば当たり前であり、様々な地域から、若い女性が華やかな東京の暮らしにあこがれて集まってくる東京、そもそも人口がとびぬけて多い東京に、絶対数として美人が多いのだと。  逆に、なぜ秋田、新潟、京都に美人が多いという言説が流布するのか?その理解として、同氏は、人気や魅力が低下する地域のある種のブランディングによるものであろうと(私の理解)。  というのも、最も美人…

続きを読む

男性週刊誌の統計を見る!週刊プレイボーイは善戦!?

 近年、本・雑誌離れが言われています。また加えて、電子書籍なども流通するようになり、紙媒体での本や雑誌の販売は低迷気味とも言われています。  さらに、スマートフォン等の携帯端末の普及に伴い、スマートフォンで必要な情報等を取得することが多くなり、本や雑誌などの紙媒体を通じて情報を取得する頻度が減っているのではないかと思います。  わざわざお金を払ってまで本や雑誌を購入して、さらに紙媒体として持ち歩く、自宅等に保管するというのも煩わしいということもあるでしょう。  そこで、今回は、紙媒体での本や雑誌の印刷数の低下ぶりを可視化してみました。 <目次> 1.雑誌の印刷部数はどこで見れる? 2.男性 総合 週刊誌 にみえる印刷部数の変遷 3.男性 総合 週刊誌 が低迷する中で、最も頑張っているのは「週刊プレイボーイ」? 4.所感とまとめ 1.雑誌の印刷部数はどこで見れる?  雑誌の印刷部数については、一般社団法人 日本雑誌協会なる組織が、印刷部数を公表しています。下記のような雑誌のカテゴリ別に、期間別に情報が公表されています。  余談ですが、この分類がなかなか分かりにくい。同協会では、このくくりで印刷部数のデータを公表しているのですが、すべての雑誌について網羅的に整理しるのも一苦労な気がしています。 男性 ・総合(総合月刊誌 /  週刊誌 /  その他総合誌) ・ライフデザイン(男性ティーンズ誌 /  男性ヤング誌 /  男性ヤングアダルト誌 /  男…

続きを読む

VRとうより科学読み本として面白い。廣瀬通孝「いずれ老いていく僕たちを100年活躍させるための先端VRガイド」(海…

※関連する記事はこちら。 【稲見昌彦/書籍】「スーパーヒューマン 誕生! 人間はSFを超える」の面白かったところ3点(2016/2/11読了)  VRについて情報取集したくて本屋さんで手に取った本書(廣瀬通孝「いずれ老いていく僕たちを100年活躍させるための先端VRガイド」(海星社新書))を読み終わり、その感想は科学読み本として面白いであった。  言っていることは、日本の今後の少子高齢社会について、なかなか考えさせられる内容であるし、将来、高齢化×VRというキーワードが重要になりそうなことはわかった。  ただし、本書は、VRのテクノロジーをゴリゴリ記載しているものであるわけではない。その意味で、ギーク的な内容を期待した読者は残念な読後感を感じるであろう。  個人的には、それでも随所に科学者である筆者のものの考え方が理解できとても面白いと思った次第である。  そこで本書の中で、個人的にマッチした部分をいくつか紹介したい。 1.現実世界だけでなく、仮想世界にまで拡張して、問題を解決していく 2.感覚を超えることがVRのひとつの機能 3.2度目のブームのVR 1.現実世界だけでなく、仮想世界にまで拡張して、問題を解決していく  本書では、廣瀬氏が下記のような説明のもと、VRは現実世界で解決困難な事象を、仮想世界にまで拡張して考えると解決策が見えてくることがあるとしています。  現実世界は複雑で、そのままでは解決するのが難しい問題がたくさんあります。…

続きを読む

【映画や小説】映画館に行ってみると「君の名は。」が熱いと実感。評判と現実の違い?

 「君の名は。」というタイトルの長編アニメが8月の末から公開されています。     この映画「君の名は。」は、新海誠監督の長編アニメーション最新作であり、声の出演として、神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみなどが名を連ねて映画となっています。(まさか、登場人物の中で、あの人の声が長澤まさみ、だったとは…)  8月末の公開当初このアニメ映画の評判として、各種メディアを通じて興行収入の観点から、下記のような報道がなされていました。 8月26日に全国301スクリーンで封切り。 27日までの2日間で観客動員約59万人、興行収入約7億7000万円(26日が約3億4800万円、27日が約4億2200万円)。 配給の東宝は興収60億円を見込めると発表。  こうしたニュースなどを見ていて、公開直後は、色々と話題になった作品なんですね…程度の認識でした。  しかし、公開後しばらくして、実際に映画に行った人たちの口コミなどもあり、公開直後以上に注目が集まっていると、私自身も口コミで知りました。  本当に第二の波的に、この作品に注目が集まっているのでしょうか?  疑い深い私としては、念のため「君の名は。」なるキーワードで、検索ボリュームを調べてみると下記のご様子。  あれま。本当に第2の波がありますね。8月末の公開当初よりも大きな山が…  そのあと、検索ボリュームが減少していますが、第3の波なども発生するのかしら…  そんなことを感じつつも、このア…

続きを読む

【会社員・サラリーマン/読書】中高年サラリーマンの振舞い方について:楠木新「左遷論」

 楠木新氏の「左遷論」(中公新書)を読んだ。同氏の著作はしばしば読んでいて、会社員・サラリーマンの人事に関する話には、感心したものである。  今回は「左遷」というキーワードであることもあり、刺激的な内容なのかしら?とも思いつつ読み切った。  本書の詳しい内容を知りたい方は、ぜひ、本書を読んでもらいたい。ここでは、本書の中の特定の部分から派生して、いくつか述べたい。 <目次> 1.理由不問の長期休暇は中高年だからこそ必要!? 2.中高年だからこそ、副業禁止規定を緩和することも必要!? 理由不問の長期休暇は中高年だからこそ必要!?  本書の中で、中高年(40代以上)だからこそ「理由を問わず、1年間の休暇ができ、また会社に戻れる制度があっても良いのではないか?」という意見があることを知った。  なぜ、中高年なのか?  若手社員の話であれば、1年間会社の業務を離れ、広い世界に飛び出して経験を積むことで、将来会社に大きな貢献をする優秀社員に育つために必要であろうと素直に受け取れる。実際に、米国の大学院への留学(2年間)などの制度を持つ会社などもある。  しかし中高年(40代以上)だからこそ必要ではないか、という意見が世の中にはあるとのこと。  一般に、成熟した日本社会では、バブル時代のように右肩上がりで企業が成長することは見込めない。そうした中では、企業内では会社員が40代に差し掛かるころには、昇進等ができる人材と平社員に留まる人…

続きを読む

【加藤崇/書籍】サラリーマン向けの自己啓発書ではありません。加藤崇「無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える!…

 この本は、サラリーマン向けの自己啓発書ではありません。 <目次> 1.「無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える! 」は、ビジネスを行う人が持つべき信念を語る書籍 2.この本を誰が読むべきか。 3.偉業を達成したかどうかではなく、他者から求められることに対して「当事者意識をもって物事に立ち向かうこと」が重要 1.「無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える! 」は、ビジネスを行う人が持つべき信念を語る書籍  本のタイトル「無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える! 」だけ見ると、サラリーマンの会社での仕事ノウハウを語るもののようにイメージしがちですが、中身は全く別物ではないかとおもいます。  著者の加藤崇氏は、東京大学発のヒト型ロボットベンチャー企業をグーグルに売却して話題となった経営者です。その加藤氏のこれまでの歩みと、同氏が考えるビジネスを行う人が持つべき信念を語る書籍なのです。  先日、同書を読み終わりましたが、いたく同意しました。加藤崇氏の信念を私の言葉でざっくり言えば、「当事者意識をもって物事に立ち向かうことが大切」ということです。この信念、とても大切です。言葉としては、世間一般でよく言われることですが、これを地で行っている人、実践している人は少ないのが実態でしょう。 2.この本を誰が読むべきか。  さて、この書籍「無敵の仕事術 君の人生をドラマチックに変える! 」。私としては、とても感銘を受けたものですが、誰が読む…

続きを読む

【日本の統計2016/書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2016)

※関連記事はこちら。書籍の他に雑誌の統計を知りたい方向け。 男性週刊誌の統計を見る!週刊プレイボーイは善戦!? 日本の統計2017/書籍:書籍の出版点数と平均定価から見る出版戦略分析をフォロー(2016年に続き)。(総務省統計局 日本の統計2017) 【日本の統計2019書籍】出版の戦略。書籍の出版点数と平均定価(総務省統計局 日本の統計2019)  先日の3月10日に、総務省統計局から「日本の統計2016」が公表されました。様々な分野の統計データが公表されています。  今回その中で注目したのが「書籍の出版点数と平均定価」というデータとなります。  昨今(というかそれなりに前から)、出版不況と言われていて、雑誌が休刊や廃刊になったり、出版社の経営が傾いたり…と非常に苦しい出版業界のようです。  しかし、実際のところ出版物の状況はどうなのか?出版点数と平均定価の観点から見ることができます。  そもそも、世の中のみんなは、本を読まなくなったと言われています。その真偽はわかりませんが、普通、人々が本を読まなくなれば、本は売れなくなり、したがって出版数が減っていく。  さらには数が少なくなるので、価格も上昇していく…というのが想定する状況なわけです…  しかし、この統計データを見るとあらためて、世の中の出版に関わる「アレ・コレ」が分かりました。以下では、そのポイントを紹介します。 <目次> …

続きを読む

【稲見昌彦/書籍】「スーパーヒューマン 誕生! 人間はSFを超える」の面白かったところ3点(2016/2/11読了)

※関連する記事 VRとうより科学読み本として面白い。廣瀬通孝「いずれ老いていく僕たちを100年活躍させるための先端VRガイド」(海星社新書) 【VR:仮想現実/随筆】アニメも美女も自治体もお台場も、みんなVR(バーチャルリアリティー、仮想現実)  AR(拡張現実)、VR(仮想現実)等が最近注目されていますが、同書の著者は人間拡張工学なる学問の専門家です。つまり、AR、VRを含む、人間の能力を拡張するための工学技術を研究している人です。1972年生まれの40代前半の研究者の方です。  本書のタイトルからも分かる通り、様々なSF的なアニメ、漫画、小説を題材とした切り口から、人間の能力を拡張して実現されるのであろう世界観をイメージさせ、そこに現実の工学技術で「ここまでできる!」を紹介する良書です。  著者の稲見氏は、“甲殻機動隊”で出てくるいわゆる「光学迷彩」的なものを、この現実の世界で、現実的な技術の組み合わせにより、ある意味で実現した人としても有名だそうです。  本書「スーパーヒューマン 誕生! 人間はSFを超える」の中で、「へぇー」と感心したトピックを3つご紹介します。 <目次> 1.なぜ人々は人型のロボットを開発したがるのか? 2.VRによって体験がシェアできる? 3.技術で脱身体も可能? 4.読後の所感    1.なぜ人々は人型のロボットを開発したがるのか?  日本のアニメの中には、ドラえもんをはじめ、パトレーバー、ガンダム等々、…

続きを読む

【加谷珪一/書籍】「これからのお金持ちの教科書」から学べる3つのこと(CCCメディアハウス、2016/2/11読了)

 加谷珪一氏の書く書籍は、今後のサラリーマンの資産づくり、収入の確保を考える際にとても役立つ助言や将来見通しが非常に多いものです。例えば、次の2つの書籍は必読の書ではないでしょうか。 ・お金持ちの教科書(CCCメディアハウス) ・これからのお金持ちの教科書(CCCメディアハウス)    加谷珪一氏の著書の中のいくつかは、それほど内容のないものもありますが、上記の2つはとても役立つ。今後のサラリーマン、ビジネスマンの生活や働き方を考える上で不可欠と思います。  そこで今回は、2015年12月7日初版発行された「これからのお金持ちの教科書(CCCメディアハウス)」から学べる3つのポイントを紹介します。 <目次> 1.年収を殖やしてお金持ちになることは案外難しい 2.事業化には手間やコストがかかる資金調達が必要だったが、それから解放される世界が来る 3.個人のアイデアや知恵こそが今後の資本となる 1.年収を殖やしてお金持ちになることは案外難しい  同書では、経済活動を通じて富を形成する方法には2種類あると解説しています。そのひとつめは、毎年の収入を最大化して、より多くを貯蓄していく方法です。そしてもう一つは、資産を保有して、その価値を高めていく方法です。  前者の方法は、例えばサラリーマンの給与所得のようなものです。この方法では実は大きな富を形成することは難しく、限度があるのです。なぜならば、サラリーマンの一人の給与所得には実質的に上限…

続きを読む

【河合隼雄、立花隆、谷川俊太郎/書籍】読む力 聞く力(岩波書店、2016/1/15読了)

本書は、絵本・児童文学研究センター主催第10回文化セミナー「読む 聞く」(2005年11月20日)の記録であり、それを文庫本化した書籍です。 著名な3名、臨床心理学者の河合隼雄氏(故人)、ノンフィクション作家の立花隆氏、詩人の谷川俊太郎氏による講演、パネルディスカッションをまとめたもの。 今回は、この2005年開催のセミナー、その中でも特に、立花氏が講演の中で人工内耳を例に挙げて話している部分に注目しました。昨今の人工知能(AI)ブームの中、今後の技術開発の方向感を考えるのに役立つ話だと思ったからです。 ■わかるということ ―立花氏の講演の中から 本書内には、立花氏の講演録がおさめられています。その中で、同氏が人工内耳を例に取り上げて説明している部分があります。 (P43)耳の中に蝸牛というカタツムリみたいな格好をした器官があって、その中に有毛細胞があります。そこに人工的な電極を入れて… しかし、同氏は、本当に音が何かを「わかる」ためには、単に音を聞いて、その音の信号を脳に届けるだけでは駄目であると説明しています。 (P48)普通われわれは音がしたとき、その音がした方をパッと向いたりします。それは音と空間の音波の伝わり方の関係が分かっているからで、生まれてからそういうものと隔絶された世界に住んでいた子供はわからないわけです。 つまり、立花氏は、音を電気信号に変えたもの、その他の器官の情報、また記憶等のすべてが全部合わさって初めて、その音に…

続きを読む

【浅子佳英、宇野常寛、門脇耕三/書籍】これからの「カッコよさ」の話をしよう(角川書店、2016/1/9読了)

 本屋で購入して以来、自宅で眠っていた本書を引っ張り出し、読み終わりました。本書『これからの「カッコよさ」の話をしよう』は、批評家、建築家、インテリアデザイナーの3人による対談集的な書籍。ファッション、建築、インテリア、そしておもちゃ等、様々な身の回りのモノの「カッコよさ」についての議論がおさめられています。  著者の浅子佳英、宇野常寛、門脇耕三の3名は、ともに70年代生まれの中間的な世代です。だからこそ、古すぎず、かといって新しすぎず、両者の良い点をミックスした感じの思想、発想のもとで、これからの「カッコよさ」について話してくれる書籍です。同書の中で、個人的に興味を覚えた部分を紹介します。 <目次> 1.「コト」の一元性と「モノ」の多元性 2.IoT時代の「モノ」から「コト」へ 3.まとめ 1.「コト」の一元性と「モノ」の多元性  現在、「IoT」というキーワードが世の中に氾濫しています。いわゆる、「モノのインターネット」のことです。情報通信技術の中で注目されている技術的なものです。  この現在の「IoT」のトレンドとして、新聞、雑誌、書籍等を読んでいると、「モノ」ではなく「コト」(体験やサービス等)で新しい価値を生み出していこうという考え方が喧伝されていると認識しています。  こうした世の中の認識がある中で、本書では次のようにバシッと言っている。 (同書P213-214)「コト」の抽象性、形のなさというのは、どうしても「気持ち…

続きを読む

【真山仁/書籍】当確師(中央公論新社、2016/1/1読了)

真山仁氏。とてもお気に入りの作家です。同氏は、なんと作家デビュー10周年を迎えたようです。最新作「当確師」を書店で見つけて手に取ってみた際に、本の帯にデカデカと記載されていました。 大好きな作家ではあるものの、私個人的にはそのあたりには関心はない。ただ10周年と聞いて、10年前、自分は何をしていたのかな、と振り返ってしまいました。同氏のように世の中に良い価値を生み出して来たのかなと… 「ハゲタカ」に始まり、直近では「売国」「雨に泣いている」等、真山氏の作品は一通り読んできた中で、今回も本書「当確師」を読み終わって、やっぱり「いいな」と感じました。 主人公 聖達磨こと選挙当選請負人 ダルマ。凄腕の選挙コンサル。人の心の中の欲や謀略などを読み取り、次々と裏をかく思考がとても痛快。それから、選挙に出馬した黒松幸子、さっちゃんことNPO法人代表を務める社会活動家。深く社会福祉のあるべきビジョンを持ちつつも、現状の政治に対してただ文句を言うだけではなく、冷静に、そしてシビアに現実の改善を実現すべく振る舞う姿。 ああ、現実の世界にこれほど魅力的な人は実在するのでしょうか。あくまでも小説の世界だけの話なのでしょうか。いや、単に私の周りにそのようなスゴイ人がいないだけなのかしら。いやいや、もっと可能性がありそうなのは、魅力的な人がいても気づかない私の鈍感さかもしれないですね。

続きを読む

【松田卓也/書籍】人類を超えるAIは日本から生まれる(廣済堂新書、2015/12/31読了)

同書は、最近至る所で見かける「AI」「人工知能」、そして「人類を超える知能」等のキーワードに引きつけられて手にした新書となります。 同書は、ディープラーニングに代表される注目の人工知能技術、その他新しい研究動向、超知能が2045年までに生まれるという「シンギュラリティ」の話について、有名実業家や研究者の論を紹介しつつ、人工知能の重要性を説く良書です。 今後の人工知能実現の際に、どの国が開発を主導するのかで、世界の中での日本のポジションが決まってしまうという趣旨だと読みました。人工知能というキラーテクノロジーを軸に、今後の日本の国際的な競争力を確保しなくてはいけないということは何となく理解できます。 ただ、個人的に非常に関心があることは、汎用的な人工知能、それも人間の知能を超えた人工知能ができ、そして人間の仕事や、やらなくてはならない作業などをすべて代わりに行うようになった将来、人間はどうなるのか?という疑問です。 そもそも、人は他の人たちの間で「どうしても差をつけて、優越感を感じたがる」生き物です。人が自身の能力を持って、他者との違いを表現する仕事という手段が人工知能に奪われた際に、何をもって人は他者との間に優越感を見出すのか。 美意識や、芸術に対する造詣が他者との違いを見出す対象となるのか?はたまた哲学的な思索、思想といったものになるのか?いずれにしても、実用的な能力が全て人工知能で代替えしてしまうようになれば、そのようになるのかもしれません。 それって、人工…

続きを読む

【柚木麻子/書籍】私にふさわしいホテル(新潮文庫、2015/12/31読了)

近年本屋で見出した作家の中で、1, 2をあらそうお気に入りの作家さんです。「終点のあの子」「ナイルパーチの女子会」、もちろん「ランチのアッコちゃん」など、過去の作品もいろいろと読ませていただいています。とても面白い。 この2015年末に、柚木氏の小説を読めて、ああ、良い1年の締めくくりとなった気持ちでいっぱいになりました。 さて、本書のあらすじは読んでみてのお楽しみということにして、個人的に気に入った点をご紹介しましょう。なんといっても一番のお気に入りキャラは、主人公の30前半女子で小説家志望の中島加代子ではなく、文壇最後のドンファンこと東十条宗典先生なのです。 はじめのころは、登場するたびに、文壇の大御所というポジションからか、威張り散らして、酒、女と贅をつくした遊びをする遊び人。しかもこのところ物書きとしての質も伴っていない状況という、ダメな老害的な存在でした。 しかし、話が進むにつれて、若かりし頃の物書きとしての懸命な姿がちゃんとあり、さらに中島加代子といがみ合いつつも、どこか若手作家の文筆の才能のみならず、善悪は別とした人間としての力強さ的な魅力を認める姿が見ていてグッとくる。 そして、最後には、グレている感じがするけど、良識ある大御所として、名実ともに文壇に返り咲く姿が何とも心地よかったのです。もちろん、主人公の中島女史も魅力的です。 本書を読み終わり、現実を見渡してみる。分野も違うし現実世界の話ではあるけれども、文壇ではなくビジネスの世界にも、この東…

続きを読む